東南アジアの知財開拓に向けて【知財コラム】知財よろず研究所

知財よろず研究所(知財コラム)

 最近、外国出願に興味があるお客様と話していると、東南アジア諸国のような新興国について頻繁に質問を受ける。これらの地域は日本から距離的に近い製造拠点として長く注目されている。しかし実際に話を聞いてみると、権利化に踏み出すのを躊躇しているケースがとても多い。理由を尋ねてみると、驚くほど同じような回答が得られる。「新興国での権利化は必要なのはわかっているが、主要国(米国・欧州・中国)の権利化コストだけでも高額なので、新興国にコストをかける余裕がない」、或いは、「権利を取得しても、その国で実効性があるのかわからない」という声が多い。しかし日本に比べて訴訟リスクが大きいため、少なくとも必要最低限の権利確保は必要であろう。

 これらの新興国での権利化が進まない要因として、「権利化コストの削減」「早期権利化」は避けては通れない課題である。これらの地域は国数が多い割に、多国間条約(例えばヨーロッパ地域の欧州特許条約(EPC)、アフリカ地域のアフリカ広域知的財産機関(ARIPO)やアフリカ知的財産機関(OAPI)、南米地域のアンデス共同体など)がない空白地帯であるため、手続面が煩雑になりやすい。またタイなどでは、権利取得までに出願から10年以上要する国もある。

 これを解決するためには、例えば次のような手法が有効である。まず出願ルートとしては、対象国が多くなることを予想してPCTルートを選択する。これにより、数ヶ月という短期間で国際調査報告書が入手でき、公開前に権利化可能性を早期に判断できる。そして必要に応じて19条補正、特許審査ハイウェイ(PPH)を活用して早期審査制度を活用する。特に特許審査ハイウェイは、拒絶理由通知回数の削減、特許査定率の向上、ファーストアクションまでの期間短縮、特許査定までの期間短縮などのメリットがあることが統計的に報告されている。これにより、早期審査申請が難しい国でもPPH経由であれば、早期審査を容易に受けられることもある。

 また上述のタイは日本企業にとって関心の高い新興国の一つであるが、小特許制度という特有の制度もある。小特許制度は日本の実用新案制度とは異なり、物の構造以外であっても保護対象となる便利な制度であるが、現在のところ、かつての中国の実用新案制度のように外国人にあまり知られておらず、ほとんどが内国民しか活用されていない状況である。
 このように新興国には様々な障壁が存在するものの、対処法いかんによっては、未開の地で他者より有利に知財戦略を展開できるチャンスがまだまだ残されている。

知財よろず研究所 著者プロフィール

SSIP 誠真IP特許業務法人 弁理士 ジュニアパートナー 渡邊 裕樹 さん(理学修士)
【経歴】東京工業大学大学院 理工学研究科卒業(物性物理学専攻)
【職歴】専門商社に勤務後、大手国内特許事務所を経て現職
【業務内容】機械・制御・電機分野の特許権、著作権が専門
【趣味】ギター・ドライブ

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